タイで会計コンサルタントをしている公認会計士の西川です。

今回初記事となりますが、これから、 タイで活躍するビジネスパーソン向けに、慣れない管理業務に役立つ会計管理の基礎について発信していきます。

さて、第1回目は、「VATと小切手を利用した横領事例と対策」をご紹介します。

本件は、私が来タイ後、1年間の間に3社の事例を見聞きしたもので、発生頻度は多いと思います。また、性質上、横領額も大きくなりやすいものです。

手法としては、管理畑でない駐在員の方がVAT・小切手の知識が無いことを利用して行うものです。知ってしまえば対策は容易な事例ですので、ぜひ本記事をリスク管理に役立ててください。

同じ事例で被害に遭う会社様が少しでも減るよう願っております。

それでは見ていきましょう!

事例の概要

タイにおいてVATは振込納付可能ですが、本件では、タイ人経理責任者が「タイでは現金での納税しか認められていない。ついては、自分が銀行で現金を引き出し、税務署窓口で納付をしてくるため、線引されていない小切手にサインをしてほしい。」と言ってきます。※

※線引き小切手とは、下図のように、小切手の左上に二重線を引き、その間に「Account payee only」等と記載のうえ、or bearer(持参人払い)の記載を消したものです。線引き小切手の場合、銀行へ持ち込んでも相手先会社の口座へ直接入金されます。

なお本件に限らず、紛失等に備え、小切手は全て線引きすることが望ましいです。(落とした小切手の拾得者が銀行に持ち込んでも現金化できません。)

線引き小切手のイメージ
銀行へ持ち込んでも現金化できない

タイ人経理責任者は、線引きされていない小切手へサインを受けたのち、これを銀行へ持ち込み、現金を引き出します。それを税務署へ持って行き納付する、、、はずが、ポケットへ入れて帰社します。

帰社後、会計仕訳にて、VATを納付したという虚偽の仕訳を計上します(会計上は納税したことになっている)。しかし、当該仕訳の会計伝票には、(当然ですが)税務署の領収書が添付されていません。

経理責任者は上記を数ヶ月間繰り返した後に退職します。監査や税務調査で気づいた時には既にいないということです。

横領額は、仮に月5万THBを10ヶ月繰り返したとすると、50万THBとなります。

対策例

対策は色々と考えられますが、全てをご紹介すると多くなりますので、重要なもののみご紹介します。

(1) 将来の発生を防止する対策

① VATは振込納付とする

VATの納付を振込納付とすることで、本件は完全に防止可能です。

② 線引き小切手にのみサインをする

振込納付をしていれば本件は防止可能ですが、線引き小切手は非常に重要ですので、もう少し解説をします。

この手法は、線引きでない小切手にサインをさせることで、現金を引き出し、それを横領するものです。つまり、現金で引き出させなければ良いだけですので、小切手へのサインは必ず線引き小切手へ行うことでも防止可能です。

本件に限らず、線引きされていない小切手が必要ということは、「手元に現金を引き出す必要性」があるはずですので、線引きでない小切手が回付されてきた場合には、「なぜ手元に現金が必要なのか」を必ず確認するようにします。

その他の不正の防止にもなりますし、線引きされていれば小切手を落とした場合も安心です。

(経験上、「小口現金の補充」以外で線引きでない小切手を使用しなければならないケースは、ほとんど見たことがありません)

(2) 発生済みの横領を発見する方法

① 税務署の領収書の有無をチェックする

既に線引きされていない小切手を利用し納付をしてしまっている場合、過去に横領が無かったかの確認としては、「VAT納付の会計伝票に税務署の領収書が添付されているかどうか」を確認します。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本手法は、管理畑でない駐在員の方がVAT・小切手の知識が無いことを利用し、線引き小切手にサインをさせることで、手元に現金を引き出し、これを横領するものです。

効果的な防止法は、手元に現金を引き出させない(振込納付 or 線引き小切手)ことです。

また、既に発生してしまっている横領を発見するためには、VAT納付の会計伝票に税務署の領収書が添付されているかどうかを確認します。

事例の頻度は多く、横領額も大きくなりやすいものですが、上記を知っていれば完全に防止・発見可能ですので、ぜひお役立てください。

最後にお伝えしたいこと

海外では外部リソースを上手に活用する

海外ビジネス現場では、限られたリソースでの運営が求められます。

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