タイで会計コンサルタントをしている公認会計士の西川です。

タイで活躍するビジネスパーソン向けに、慣れない管理業務に役立つ会計管理の基礎について発信しています。

さて、本日は「2019年5月5日発効のタイ労働者保護法改正の概要」です。

私の主宰する、「複数専門家による顧問サービス カイプロ」にて労務を担当している社会保険労務士の長澤さんに執筆をいただきました。

ご参考にしていただけますと幸いです。

なお、今回の改正内容を就業規則に反映させるための修正についても対応をしております。言語はタイ語・英語・日本語いずれも可能です。

ご希望の方は以下メールアドレスへお気軽にご連絡ください。

na-nagasawa@bn-asia.com

※改正の対比表は法令の直訳ではなく、法令の理解をまとめた内容となっております。

9条:退職時・補償金等の支払いにかかる遅延利息

従来より退職時やその他の理由で補償金などの支払いが発生する際に、労働者保護法9条1項で支払い遅延時の利息についての規程がされていました。この対象範囲が拡大しています。

それぞれの支払い期日を把握し、支払い遅延が起こらないように対処すべきです。

また、退職にかかる見解の相違により支払いの必要がないと考えているような場合、調停や裁判で解雇補償金の支払いが必要とされる場合には、延滞利息も発生することも想定しておく必要があります。

従来改正後(太字は改正点、以下同様)
以下の支払いが期日から遅延した場合、年間15%の利息を加算して支払うものとする。

1.解雇時の;
・会社が従業員から預かっている保証金
・賃金
・時間外手当
・休日手当
・休日時間外手当
・労働者保護法118条の解雇補償金
・労働者保護法121条、122条の整理解雇時の特別補償金
※解雇より3日以内の支払い









以下の支払いが期日から遅延した場合、年間15%の利息を加算して支払うものとする。

1.解雇時の
・会社が従業員から預かっている保証金
・賃金
・時間外手当
・休日手当
・休日時間外手当
・労働者保護法で支払いが求められるその他の支払い
・労働者保護法118条の解雇補償金
・労働者保護法120条1項の住所変更等に伴う退職時の特別保証金
・労働者保護法121条、122条の整理解雇時の特別補償金
※解雇より3日以内の支払い
 
2.解雇予告手当
※最終勤務日に支払い
 
3.労働者保護法75条の会社都合の休業時の補償金

13条:雇用主変更時の従業員からの同意

労働者保護法13条では、M&Aや事業譲渡などにより雇用主の変更があった際には、新しい雇用主は従来の雇用条件を引き継ぐという規定がありました。

これに加えて、雇用主の変更があった際には、従業員からの個別の同意を得る必要があります。

同意が得られない場合はどうするかという疑問がありますが、従業員が同意をせずに退職する場合には、会社都合での解雇の扱いになると考えられます。(=解雇保証金の支払が必要)

今後M&Aをする際には、事前に従業員の同意を取り付ける、また同意が得られない従業員については解雇補償金が発生する前提で株式の売買価格に反映させるなどの対応が必要となってまいります。

従来改正後
資産の譲渡や株主の変更等により雇用主に変更があった場合、新たな株主は従業員に対する従来の権利義務を引き継ぐものとする。

資産の譲渡や株主の変更等により雇用主に変更があった場合、新たな株主は従業員から同意を得なければならず、また新たな株主は従業員に対する従来の権利義務を引き継ぐものとする。

17条1項:有期雇用契約の契約解除時の補償金

もともと17条では、有期雇用契約については、事前の通知なく契約満了時に契約が終了するという規定がありました。

契約期間が満了する前に契約解除とする場合の取り扱いについて明確になっていませんでしたので、有期雇用契約で契約を途中で解約する場合には、契約満了までの期間の賃金を支払うことが明記されました。

従来改正後
17条2項に定める従業員への事前通知をせずに契約の途中で契約解除とする場合には、会社は最終勤務日から17条2項に定める有期雇用契約の満了時点までの賃金を支払うものとする。当該賃金は従業員の最終勤務日に支払うものとする。

34条・57条1項:私用休暇の年間3日間の有給規定

これまでは、私用休暇は労働者保護法で規定がありましたが、日数の明記は無く、何日とするか、また有給・無給は会社で決めることができました。

今回の改正により、私用休暇は年間3日間までは有給とすることとなりました。

従来改正後
(34条)
従業員は、就業規則に基づき所要の手続きのための休暇を取得することが出来るものとする。
(34条)
従業員は、年間3日間以上の所要の手続きのための休暇を取得することが出来るものとする。
(57条1項)
(57条1項)
会社は労働者保護法34条で規定する私用休暇について、年間3日まで有給とする。

※年間3日を超える私用休暇の取得も可能であるが、その場合有給とするか、無給とするかは就業規則等で規定される。

41条:出産休暇の対象と日数の増加

出産休暇はこれまで90日間までとされてきましたが、出産前の健康診断受診時の休暇も有給の対象となり、健康診断のための休暇を含み98日間までとなりました。

従来改正後
妊娠中の女性従業員は、1回の妊娠につき90日以下の出産休暇を取得することができる。妊娠中の女性従業員は、1回の妊娠につき出産前の健康診断受診時の休暇も含み98日以下の出産休暇を取得することができる。

118条:20年以上勤務した際の解雇補償金の増額

従来は10年以上勤務した際の300日分の賃金支払いが解雇補償金の最高額でしたが、今回の改正により20年以上勤務した際に400日分の賃金支払いがされることとなりました。

従来改正後
勤続10年以上の従業員に対しては、最終賃金の300日分以上の解雇補償金を支払うものとする。勤続10年以上20年未満の従業員に対しては、最終賃金の300日分以上の解雇補償金を支払うものとする。

勤続20年以上の従業員に対しては、最終賃金の400日分以上の解雇補償金を支払うものとする。

結果、解雇保証金に関する規定は以下の通りとなります。

勤務期間金額
120日未満なし
120日以上1年未満最終賃金の30日分
1年以上3年未満最終賃金の90日分
3年以上6年未満最終賃金の180日分
6年以上10年未満最終賃金の240日分
10年以上20年未満最終賃金の300日分
20年以上最終賃金の400日分

120条:事業所移転時の特別解雇補償金規定

雇用主が事業所を移転する際、変更の30日前までに、従業員に通知・公表することが必要となります。

また、従業員は、通知から30日以内に雇用主に申し出ることで、退職が可能となります。その場合、雇用主は、当該従業員への解雇補償金の支払いが必要となります。


解説は以上となります。

今回の改正内容を就業規則に反映させるための修正について弊社で対応しております。言語はタイ語・英語・日本語いずれも可能です。

ご希望の方は以下メールアドレスへお気軽にご連絡ください。

na-nagasawa@bn-asia.com